まちの人 alt

2020.09.20

イラストレーター・ふるさと画家 上野 啓太さん

70号:おかげさまで第70号!湯島本郷マーチング通信 第70号記念スペシャルインタビュー

建築現場で、湯島本郷のまちなみイラストが描かれたフェンスを見かけたことはありますか。最近だとフクダ電子の本郷事業所(仮称)の建築囲いで見ることができます。そのイラストを描いているのが上野啓太先生。マーチング通信の表紙でもおなじみ「湯島本郷百景」を手掛けるふるさと画家です。 第70号目の記念インタビューは、生まれも育ちも湯島っ子の上野先生にお話を伺いました。

心のフィルターを通して描いたまちなみのイラストで自分のまちをもっと好きになってもらいたいと思っています

まちなみのイラストを描くポイントは何ですか?

 その場をすべて切り取れる写真とは違って、イラストは人の心のフィルターを通した景色を表現できます。まちのイラストを描く上で僕が大切にし ていることはいくつかあるんですが、 まずはそこにお住まいの方が「この絵はうちの近所のあの場所だな」とわかってくれること。なにげない看板でも、おろそかにはしません。    
 そして、目線の高さで描くことですね。大人の目線は 140 ㎝から 170 ㎝ぐらい。 その数十㎝の中に目にする景色が全部入ります。これを変に下からあおった構図にしてしまうと、その景色はもう、普段見えているものではなくなってしまう。もうひとつ大切なのは、人と車の量。交通量の多いところは、そのように人や車を描きこまないと、「ここはうちの景色だ」とは思えなくなるのだから不思議なものです。それから 視界の中に目立つものがあったら、あえて目立つように描いています。わかりやすい例はスカイツリーかな。印象的なものって、人の感性のフィルターを通すと実際よりも大きく感じる。スカイツリーは 1.5 倍くらい意図的に大きく描くことで、印象通りのサイズになるんですよ。人の感性って不思議ですね。

地域のために取り組んでいることを教えてください

 湯島本郷百景がきっかけで、9年ほど前から湯島小学校で図工の特別授業をやらせていただいています。子供たちに自分の住むまちをもっと好きになってほしいから、自由な発想でまちの絵を描く授業です。
 正解がひとつの算数や国語と違って、図工は十人十色なところがいい。 人の数だけ正解があるから、とにかく自由な発想で描く。空想力をうんと働かせて、 50 年後、 100 年後、あるいは 100 年前の湯島本郷でもいい。筆を使っても指を使ってもいい。それぞれの感性と自主性に任せて楽しく描いてもらっています。
 僕も湯島小出身なので、授業ができることは光栄だしすごく楽しいです。コロナ禍の影響でこれからは子供たちの絵も変わってくるかもしれませんが、体力が続く限りやらせていただきたいですね。

建築現場の「まちなみイラスト」

イラストを使った商品の一部

オフタイムはバイクのメンテナンス

最後に湯島本郷の魅力と、読者にメッセージをお願いします

 湯島本郷って、江戸時代の古地図を追っていけば、どんなふうに発展してきたのかがわかって、歴史を調べることができるのがおもしろいところですね。浮世絵にも、不忍池が見渡せる湯島天神の坂が描かれていて、高台の見晴らしのよさがわかります。僕が小学生の頃だって、物干し台にのぼると東京タワーが見えていましたよ。 今では空も小さくなりましたけどね。 当時は、戦火を逃れた名残もあったし、 花街として栄えただけあって、料亭など風情のある建物もありました。この10 年でマンションが増えて建物も住民もずいぶん入れ替わりましたけど、 まだあちこちに歴史を感じられるものが残っています。湯島本郷を散歩しながら、皆さんもまちのおもしろさを発見してください。

上野啓太さんのオフタイム

湯島本郷地区のみならず、全国のマーチング委員会のイラストも描いている上野さん。取材ともなると趣味のオートバイにまたがり、日本全国を訪れます。「初めてのツーリングで『あ、バイクって地続きの場所ならどこへでも行けるんだ。バイクってすごい機械なんだ』と実感して以来、すっかりハマりました。全部で5台のオートバイを毎日欠かさず整備して乗っています。それぞれ個性のあるバイクをメンテナンスしている時が僕にとってかけがえのない時間ですね」

 

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