2025.01.18
96号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし13
講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん
令和7年を迎え、最初の小話は「一人は独りにあらず」 と題させていただきます。年末年始といえば、家族そろってあたたかい部屋で過ごしたり普段会えない親族が集まり子供の成長を喜び合う、そんなあたたかい時間が世の中の年末年始のイメージでしょうか。しかし皆が皆、家族に囲まれ過ごすわけではなく、お仕事や、一人テレビの前で過ごされる方も多いはずです。一人で寂しいと思う方、 一人ではないけれど寂しさを感じている方、皆さんは「一人」は寂しいですか?お釈迦様はこう説かれています。「独り去りて、独り来たる」。すべての生き物はこの世界にひとりでやってきて、ひとりで去ります。どんな場所に生まれようとも人生はそんなものなのです。今あなたがひとりぼっちだと感じていても、お釈迦様は決してそれを笑ったりしません。身体そのものが「一人」と「独り」は心の在り方で変わりますね。私も大好きなお話『星の王子さま』にも「孤独」についてのヒントが描かれています。星の王子さまは6つの星を旅した後に、7番目の星である地球に着きます。そこは砂漠でした。誰もいない砂漠に孤独を感じた星の王子さまは砂漠の花に人間はどこにいるのか尋ねます。砂漠の花はこう答えるのです。「さあ、どこで会えるのかわかりませんね。風に吹かれて歩き回るのです。根が無いのだから大変不自由していますよ。」
この砂漠の花は、根があるから動けなくて不自由しているのではなく、根が無いから不自由しているのだと言うのです。根というのは、拠り所のことです。自分の居場所がない人は孤独ですし、居場所があってもそこに心の居場所がなければ孤独を感じるのです。物質的な一人ではなく、心の拠り所があることが孤独からの解放だと気づかせてもらえます。年末年始、 一人の方もそうでない方も、 生きていく中で「拠り所」さえあれば、「独り」ではありませんし、物質的な「一人」は皆、 おなじなのです。独りになりそうな方がいたら安心してください。これから拠り所を探せばいいのです。人生はそんな旅のようなものだと思いますし、そんなもの、ですね。