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2023.03.19

「一切皆苦」を忘れずに幸せになる

85号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし2

講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん

 もうじき、春がやってきますね。厳しい寒さを乗り越え春の訪れを感じるようになると、嬉しい気持ちと同じくらい、 移ろいゆくその速さに、どこか切なさを感じてしまいます。 私は僧侶ですので、様々な方々の苦しい場面や悲しむお姿に多く立ち合います。その時に、世の中がどうであろうと、いつ何時も、叫びたいほどの悲しみの渦の中にいる人々が必ず存在するという現実に、無常を感じます。お釈迦様は人の「苦しみ」についてこう説かれました。
 「一切の形成されたものは苦しみであると、明らかな智慧をもって観る時に、人は苦しみから遠ざかり離れる」。これは仏教の教えでも有名な「一切皆苦」という教えです。
 「生きる」と「苦しい」はセットだということ、人は誰でも歳をとり、病気になり、亡くなります。「生老病死」ともいい、人はここから逃げることは出来ません。しかし、変化を受け入れることで、新しい気づきや、限られた時間を意識することで今を頑張れたりすることもあります。「一切皆苦」を知ることで、本当のしあわせが何か、見えてくるはずです、とお釈迦様は説いて下さいました。 毎日つらいことや苦しいことがあるかもしれません。しかしそれは当たり前のことと思えるようになれば、生きる喜びに気づくことだって難しいことではないのかもしれません。生きることは苦しいのです。 だからこそ、人は努力し、感動し、分かち合い、幸せを感じるのではないでしょうか。今日も、 残念ながらこの世界では許し難い争いで涙を流す人々、大切な人の死と向き合う人々が、 この瞬間もいるのです。少しでもその苦しみが小さくなることを祈りながら、「一切皆苦」 を忘れずに、しあわせを見つけていきましょう。人生はいつからでも、いくらでも、楽しくなりますから。

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