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2024.09.15

「呼びかた」

94号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし11

講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん

これをお読みくださっている貴方様は、僧侶のことを呼ぶとき、どのように呼びますか? 「お坊さん」「住職」「和尚さん」「方丈さん」…といったところでしょうか。

宗派によって呼び方が違うこともあり、少々ややこしいですね。住職とは立場ですから一カ寺の住職であれば間違いではないですし、和尚さんもいいですね、私は好きです。私は女性の僧侶ですので、「尼さん」と認識されることがありますが、大ヒット連続テレビ小説の『あまちゃん』の「海女さん」と同じ響きなので言われると一瞬海が浮かぶのです(笑)
本来、「尼」は仏道に入った女性の修行者のことを指し、サンスクリット語の比丘尼が語源になっています。「尼さん」は通称で使われることが多いですね。勿論、 「尼さん」でも良いのですが、もし今後どこかで女性のお坊さんとお話しする機会があれば「尼僧(にそう)さん」と仰っていただくと美しいかと思います。また、お寺には住職の他に、奥様がいらっしゃったりしますよね。この奥様の呼び方もまた、さまざまでして、「坊守(ぼうもり)」「寺庭(じてい)」など、宗派や地域により異なります。浄土宗では住職の配偶者を寺の庭と書いて「寺庭」と呼びますが、坊を守る存在と書いて「坊守さん」もよく聞きますね。
ところでお寺というものは、職員を大勢抱えている大寺から、 家族で護っている寺、住職一人で何件も兼務されている寺などその中身は実に一様ではないのです。住職は法務に葬儀など寺を空けることもありますが、その奥様やお母様、つまり寺に居る女性の役割は大変重要で、広い寺の掃除に電話応対、檀家さんの玄関対応、お茶出しなど、まさにお寺の護り人なわけです。住職一人でそれらを全てなされている寺もありますがお寺に居る女性には住職大抵、頭が上がりません。私には配偶者はおりませんので、私の母のことを「寺庭」とは呼ばないわけでして、 「大黒様」と呼ばれたりします。一説に、大黒天は厨に祀られた神様であることから、 台所「庫裡(くり)」を護る存在としてそのような呼び方になったそうです。家の中で一番強い柱を大黒柱と言いますが、女性がいるお寺は、 大黒柱は住職ではないのかも…しれませんね。

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